スポーツ・チャンバラをご存知ですか。
 その考え方は、危険に身を置かないこと。もし、相手が刃物を持っていたとき、素手で闘うより何か手に得物を持って身をかばい、相手が攻撃できなくなったら、走って逃げる。つまり、最小限の闘いで身を護る。これが基本的な考えです。
 抜刀術(真剣でワラ、竹を切る)を教わりに行った先生が、小太刀護身道の創始者で、剣道六段、居合道六段、抜刀術七段、銃剣術日本一、小太刀、槍術、柔など武芸百般の人です。その他にも刀や鎧の鑑定、骨董鑑定、焼き物の趣味など多芸です。
 その彼、曰く、「命の危険が迫ったときは、卑怯もヘチマもない。身を護った方が勝ち。竹刀でどんなに強くても、命が懸かれば逃げるか、勝つかしかない。正々堂々と闘っても、相打ちで死ねばそれで終わり。だから実戦を想定して、尚、安全な方法を捜した結果、このスポーツ・チャンバラを興した」
 さて、私は抜刀を習いに行ったのですが、そこではスポーツ・チャンバラの練習をしていました。警棒の長さで、面は空手の面のような物を着けて、フットワークよく打ち合うのです。私は剣道六段でもあるし、そこの誰にも負けない自信がありました。
「ちょっとやらないか」と女の子に誘われてやってみました。どこを打ってもよい。相手の攻撃能力がなくなったとしたときを一本とする。これがルールです。
 例えば、小手の指一本が強く打たれたとき、これではもう武器が持てないと判断して負けになります。試合は基本的に、一本勝負です。
 短刀、二刀、棍棒、薙刀、槍、またそれぞれの得物で異種得物試合も行います。
 短刀と小太刀の試合では、案外短刀が勝ちます、ただし短刀の基本を習熟していた場合です。しかし、短刀の処し方を知っていれば小太刀が勝ちます。振りかぶり振り下ろす動きは、まっすぐ来る突きの動きに負けます。打ちに行くと間違いなくその間に間合いに入られます。さらに相手がハサミ、ナイフを持つとその色合い(銀色)に身がすくみ、動きが鈍くなります。
 ともかく、こちらは打たれないで、相手の足、手の指を 打つ。飛ぼうが、跳ねようが、転びながら打とうが、自由です。
 剣道家は皆、足を切られます。空手家に面を打つと身体を思いきり下げて逃げますから、面の位置に相手の頭がない。剣道をやったものには、何とも具合が悪い競技です。
 長刀と槍が闘うと、ほとんど槍が勝ちます。武士の表芸は槍とはよく言ったものです。
 小太刀ではいいようにあしらえる女の人でも、彼女が槍を持つと私の毛穴が開き、殺気だってきます、武器が違う、ルールが違うということは、全く違う競技と考えた方がよいと思います。私も剣道を忘れ、こだわりを捨てた分だけ強くなったような気がします。
 私はダンスでも、一カ月で東北地区の新人戦で優勝したことがありますが、そのときも剣道の足さばきを捨てたときに優勝できたのです。


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